問題
あなたに,国際支援機関から,水不足に悩むアルジェリア,ヨルダン,トルコの3か国へ「水」を公平に分配するという任務が与えられた。どのように分配すればよいだろうか。
国 | 人口(百万人) | 農業における 経済活動人口(万人) |
面積(km2) | 耕地面積(km2) | 1年間に利用可能な 水(km2) |
---|---|---|---|---|---|
アルジェリア | 35 | 316 | 2,381,740 | 84,350 | 12 |
ヨルダン | 6 | 12 | 89,320 | 2,830 | 1 |
トルコ | 72 | 817 | 783,560 | 242,940 | 214 |
授業例
概要
Bowland Maths.の教材の1つである「利用可能な水の量」をもとに,「水の分配」という授業を開発し実践した。人口,面積,国内で得られる利用可能な水の量,農業における経済活動人口,耕地面積等のデータをもとに,グループで指標を作成し判断した。個人解決,グループ,学級での発表・評価などを通して,集団(グループや学級)での相互作用の質が,そこでの数学的判断の質に結びつくことがわかった。数学的判断力のプロセス能力の水準を1から3に引き上げるためには,その要因として「他者」が影響するので,個人内の水準とは別に,集団における相互作用がどのように成立するかをあらかじめ予測し,必要に応じて手立てを講じなければならないことがわかった。
教材について
Bowland Maths.の教材の1つである「利用可能な水の量」をもとに,日本の中学1年生の実態に合わせて「水の分配」という授業を開発した。「利用可能な水の量」は,中近東および北アフリカの国々へ水資源を提供するという任務を背負った架空の国際支援機関(WWRB)からの依頼を受け,データ分析者の立場で,各国における利用可能な水の量を公平に比較し,どの国がいちばん援助を必要としているかを判断するための指標を作成することを目標とした教材である。FAO(国際連合食糧農業機関)が公開している,各国の人口,面積,利用可能な水の量のデータを与えて,各国の一人当たりに必要な水の量を計算する必要性に気付かせるという流れになっている。本実践では,上記のデータの他に,農業における経済活動人口,農地面積のデータも与えた。それは,人間の基本的な生活のために必要な水よりもはるかに多くの水を農業で必要とするという状況を踏まえることにより,つくり出される指標に多様性が出てくることを期待したからである。
「公平」という価値観を数学的にどう反映させるかが鍵となる。具体的には,変数の選択や仮定・仮説の設定をし,それをもとに指標を作り,優先順位を決めたり,その指標に応じて比例配分したりする。