10.インかアウトか

1960年代に開催されたクリケットの試合での,審判の判定が正しいかったかどうかを考察する。

学習の流れ

教材の概要

 1960年代に開催されたクリケットの試合のアンパイアの判定について,当時の写真をもとにアンパイアの判定が正しいものであったかを議論する。「アンパイアが判定に要する時間はどれくらいか」「第3のアンパイアとして,テクノロジー利用が可能か」等の問題設定が提唱されている。次に,写真にもとづき測定可能な変数として,「ベイル(Bail)が落下した距離」と「バット・チップ(Bat-tip)がクリースラインを過ぎた距離」を取り上げ,比を用いて実際の距離を求める。次の時間では,速さに焦点を当て,ニュートンの法則にもとづき,ベイルが落下する速さを求める。このとき,幾つかの変数については無視したり,適当なものとして採用したりする議論が行われる。採用した変数については,仮説を立て,変数間の関係からインかアウトかを判定する。例えば,「バッツマン(Batsman)に係る速さ」についての仮説であれば,同じ(もしくは異なる)速さで動いているとか,オリンピックの選手よりは遅い等,「バット・チップがクリースラインを過ぎた距離」についての仮説としては,バット・チップの軌道は直線(ピッチに対して平行)になっている,バッツマンの腕の長さは平均をとる等が想定される。そこで,「バッツマンに係る速さ」「クリースラインを過ぎた距離」「ベイルが落下した時間」について,表計算ソフトを用いてデモンストレーションを行う。そして,最後には,インかアウトかを一目で判定できるような計算式を立て,スプレッドシートに表示することを目指す。

数学的判断力

 バッツマンがアウトになる場合に係る定数や変数を抽出する(特に,変数について測定可能なものであるかどうか)。例えば,定数としては,バッツマンがプレーをするピッチの広さやウィケット(Wicket)のサイズ等がある。


「クリケットのグラウンド」特定非営利活動法人日本クリケット協会
<http://www.cricket.or.jp/01/15.php>(Accessed 3 July 2010)

 各種変数の中から,検討している写真内のバッツマンがインかアウトかを判定するために必要な変数の優先順位をつける。そして,変数に係る仮説を設定するとともに,その仮説にもとづく数値が現実的であるかどうかを議論し,その数値をスプレッドシートの数値にも反映させる。

数学的内容

   

<測定> 写真にもとづく測定(ベイルが落下した距離,バット・チップがクリースラインを過ぎた距離)
<幾何> 相似
<代数> 比を用いた計算(数値計算)
<統計(データの取り扱い)> データの関連づけ(グループ間のデータ解析と非グループ間のデータ解析)

ICTの活用状況

 表計算ソフトを用いて,変数の数値設定を変更するとともに,演算式にもとづきインかアウトを判断する。

コメント

 クリケットのルールを知ることが必要となる。「アウト」となる場合として,ボウルド(Bowled),コウト(Caught),ランアウト(Run Out)等がある。本教材では,ビデオクリップを参照しながら,アウトとなる事例について学習できる。特に,指示されていないが,議論の対象となっている写真以外のランアウトに関する様々な状況について,数学的モデルを作成する際,本教材で選択,設定した変数の幾つかを採用することはできるだろうし,また,他に必要となる変数について,測定することもできるかも知れない。問題点としては,写真で取り上げているアウトとなるスタンプト(Stumped)は,(ストップウォッチの使用は指示されてはいるが)子どもたちが実際に体験して確認することは困難であると想定される。ランアウトの事例であれば,解決を行った後,実際に体験して確認するという活動が実現でき,よりクリケットの実際に根差した活動を展開することが期待できる。


「クリケットのルール」特定非営利活動法人日本クリケット協会
(Accessed 3 July 2010)

(松嵜昭雄・埼玉大学)

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